▼写真①【帝網2_01_回路の試作.jpg】を入れる(入れたらこの行を削除)
こんにちは。kindle本「理系出身じいじのホットクックでらくらく離乳食/幼児食/絶品パスタ/目の健康に良いレシピ」「理系出身じいじのホームベーカリーらくらく使いこなし術」の著者、生涯挑戦!をモットーにシニア世代と子育て世代を応援する、こうちゃんです。
人生初の現代アート作品《帝網(たいもう)》を作った話の第2回です。
前回は、作品のコンセプトと、10年ぶりに再会した後輩がタイムリーにも万華鏡アーティストだった、という話をしました。頭の中にしかなかった作品が、その出会いによって「もしかしたら本当に作れるかもしれない」と思えるようになった。
ただ、ここからが大変でした。
コンセプトを考えるのと、実際に手を動かして作るのは、まったく別の話だったのです。
◾️長さ50センチの、巨大な万華鏡
まずは、作品の中心になる万華鏡です。
使ったのは、長さ50センチ、幅113ミリの表面鏡を3枚組み合わせた、巨大な三角柱です。
万華鏡アーティストの後輩も、ここまで大きなサイズを作るのは初めてだったそうです。
当然、わたしには作り方が分かりません。材料をどこで手に入れるのか。鏡をどう補強するのか。ベニヤ板をどう使うのか。どの順番で接着すれば、鏡を傷つけずに巨大な三角柱にできるのか。
LINEで何度もやりとりをして、ひとつずつ教えてもらいながら、慎重に組み上げていきました。
失敗したら、大きな鏡が無駄になります。かなり緊張しましたが、ここはなんとか一発で成功しました。
組み上がった万華鏡を覗いてみた様子です。まだ部品の状態ですが、鏡の中ではすでに像が無限に反射していました。
◾️糸のこぎりで、板を割ってしまった
うまくいったことばかりではありません。
台座に使うため、ホームセンターで直径30センチの丸い板を1枚と、20センチの丸い板を2枚買ってきました。電動の糸のこぎりで板の中央をくり抜く加工に挑戦したのですが、途中で板の一部が割れてしまったのです。
やはり、思っていたほど簡単ではありませんでした。
割れた部分は、後日、接着剤で補修しました。
でも、この失敗も含めて、作品のテーマにつながっているような気がしています。
すべてが関係し合っているという話を表現しようとしている作品で、板が割れ、それを接着してもう一度つなぎ直す。うまくいった部分だけではなく、つまずいた時間も含めて、この作品を形作る過程なのだと感じました。
◾️老眼と格闘した、電子回路
次に待っていたのが、電子回路です。
やりたかったこと自体は、とてもシンプルでした。
人が作品に近づいて覗き込む。するとLEDが光り、同時に音楽が流れ始める。人が離れると、光と音が消える。
言葉にすると、これだけです。
ところが実際に作ろうとすると、超音波センサー、Arduinoという制御基板、DFPlayerという音楽再生モジュール、リレーなど、見慣れない部品が次々に出てきます。
そして、これが本当に手こずりました。
特につらかったのが、DFPlayer Proという小さなモジュールです。ピンがものすごく小さい。しかも、どの端子が何なのかを示す文字も小さい。老眼には、まあ厳しいのです。
一生懸命はんだ付けして、「よし、これで音が鳴るだろう」と電源を入れてみる。
鳴りません。
何度見ても分からない。拡大してよくよく確認してみたら、ピンを1本間違えていました。そこを直して、また試す。
すると今度は、Arduinoにプログラムを書き込めません。最初はUSBハブを経由してMacBook Proにつないでいたのですが、何度やってもエラーが出ます。
USBハブを外して直接つないだり、ピンを2本外した状態で試したり、またつなぎ直したり。何度か繰り返して、ようやく書き込みに成功しました。
ところが今度は、超音波センサーが言うことを聞きません。誰も覗いていないのに反応する。逆に、人が近づいているのに反応しない。
距離の数値を見ながら、何センチで反応させるのか、何回連続で検知したら本当に人がいると判断するのか、条件を少しずつ変えていきました。
プログラムを書き換えて、試す。だめなので、また書き換える。これを何十回と繰り返して、ようやくまともに動くようになりました。
◾️何時間も悩んだ原因が、たった一か所
その途中で、今でも覚えている失敗があります。
ようやくLEDが点灯するようになったのに、なぜか音楽が鳴りません。そして、人が離れてLEDが消えた瞬間に、音楽が流れ始めるのです。
逆です。
「なんでだろう」と散々悩んでプログラムを見直したら、条件式の「True」と「False」が入れ替わっていました。
そこを直したら、一発で動きました。
何時間も悩んだ原因が、たった一か所の書き間違いだった。ものづくりというのは、こういうことの連続なのですね。
◾️妻が縫った、宇宙の外側
そしてもう一人、この作品に欠かせなかった人がいます。
妻です。
《帝網》の外側は、濃紺の布で覆われた円柱になっています。わたしはこの外装を自分で作れないので、妻が布を縫い上げてくれました。
さらにその上には、「インドラの網」を表現するための園芸用ネットをかぶせています。このネットも、ホームセンターでたまたまグレーのものを見つけました。
そして、3センチ間隔で並んだ網の交点に、ガラスビーズを取り付けていきます。ひとつずつ、金色の0.3ミリの針金でくくりつけていく。
数個ではありません。円柱全体を覆う網ですから、とにかく数があります。
この気が遠くなるような作業も、ほとんど妻がやってくれました。
◾️作るプロセスそのものが、帝網だった
わたしがコンセプトを考え、万華鏡アーティストの後輩に技術を教えてもらい、電子回路と格闘し、妻が布を縫い、ガラス珠をひとつずつ網に取り付けていく。
そうやって、ようやく《帝網》は形になっていきました。
作り終わってから気づいたのですが、これは少し面白い話です。
《帝網》は、「すべての存在は孤立しているように見えて、実は互いにつながっている」という世界観を表現した作品です。
でも、その作品自体が、わたし一人では絶対に作れなかった。
万華鏡を作る人がいて、妻がいて、いろいろな方から知恵をもらって、それぞれが自分にできることを持ち寄った結果、ひとつの作品になったのです。
つまり《帝網》を作るプロセスそのものが、すでに「帝網」になっていたわけです。
◾️まとめ
この記事では、巨大万華鏡の制作と、電子回路との格闘、そして妻が支えてくれた外装づくりについてご紹介しました。
割れた板、間違えたピン1本、入れ替わったTrueとFalse。振り返れば失敗ばかりですが、そのひとつひとつが作品の一部になっています。
そして今回の制作には、実はもう一人、というか、もうひとつ、かなり重要な存在が関わっていました。
AIです。
電子回路もプログラムも専門ではないわたしが、なぜここまで作ることができたのか。
次回は完結編として、展示当日に起きた大トラブルと、《帝網》を一緒に作った「もう一人の制作メンバー」についてお話しします。
