こんにちは。生涯挑戦!をモットーに新大人世代を応援する、こうちゃんです。
監督・脚本・編集:原作恩田陸、石川慶監督の脚本、編集による映画版「蜜蜂と遠雷」を観ました。
ハードカバー上下2段の500ページ以上もある本の長編小説を、2時間でどう収まるのかが見ものでしたが、期待を裏切らない満足感を味わいました。
原作を読んで頭の中で感じて鳴っていた音が、映画の中で、実際にクリアで音楽的なピアノの音になって再現されていたからです。
映画自体としても楽しめる映画ですが、小説を読んでから観るとより楽しめます。
とくに音楽好きの方にはおすすめできる映画です。
■蜜蜂と遠雷の映画の印象
日本で開催された国際ピアノコンクールを競う個性豊かで才能あふれる4人のピアニストに焦点をあてた物語です。
・養蜂業を営む父をもつ異色の才能の持ち主16歳の風間塵(かざまじん)演じるのは、鈴鹿央士。
・幼いときから天才少女として注目されながら、母の突然の死で、コンサートをドタキャンして音楽の世界から遠ざかっていた、栄伝亜夜(えいでんあや)。演じるのは松岡茉優。
・28歳という最年長で、一時は音楽家の道を諦め、楽器店に務め、妻子をもつが、音楽家の道を諦めきれずに再挑戦をする、高島明石(たかしまあかし)。演じるのは松坂桃李。
・ジュリアード音楽院に在学し日系3世の天才肌ピアニスト、マサル・カルロス・レヴィ・アナトールの4人です。演じるのは、森崎ウィン。
コンクールはピアノ独奏による第1次予選、第2次予選、第3次予選を経て、オーケストラ伴奏のコンチェルトを披露する最後の本選出場権を得る6人に絞られます。
当然ながら、原作の1次予選から3次予選までの、コンテスタント達の演奏は大幅にカットされていました。
それでも、要所で焦点のあてられた4人の演奏は、映像と音で再現され、非常に迫力がありました。
映画館という超ハイクオリティな音響システムもさることながら、実際に弾いているプロの演奏家たちの演奏が秀悦でした。
しかもそれぞれの役者が本当に弾いているかのような演技が見事で、特に松岡茉優の迫真に迫る演技は本当に演奏している様にも思えて相当訓練された様子が伺えました。
中でもおそらく小説を読んだ人のほとんどが印象に残っているであろう、栄伝亜夜と風間塵がピアノ連弾をするシーンは、小説の中の想像する音を、それ以上に見事に再現していました。
明石の知り合いのピアノ工房の窓から、見える満月に誘われるように2人で紡ぎだす音楽、ドビュッシーの月の光から始まり、ペーパームーン、ベートーベンのピアノソナタ月光、それからジャズ風の即興演奏になって、最後にまたドビュッシー。
また何度でも聴きたくなる連弾でした。
2次予選の課題曲「春と修羅」の演奏者が自由に表現していい、カデンツアの部分も4人それぞれの演奏する部分が映像と音で再現されて、小説で想像した音と重なる部分もあり、こういう表現になるのかという新発見もありました。
小説では風間塵の型破りな天才ぶりが印象的でしたが、映画ではその部分よりは、栄伝亜夜の方に焦点の当て方が強めになっていたのは少し残念な部分もありました。
原作では、風間塵が今は亡き恩師ホフマンからいわれた言葉の「音楽を外に連れ出す」という言葉を理想とする演奏を目指していました。
競い合っている他の演奏者同士で触発しあって、さらに良い演奏になっているところが原作の読みどころの1つで、風間塵が一番影響を与えていたのかもしれません。
お互いに影響しあってすごい演奏になっているところは表現されていたし、栄伝亜夜への焦点を強めることで、映画作品として引き締まった作品となったように感じました。
幼いころに、亡き母とピアノを連弾する栄伝亜夜のシーンは映像で何度も登場します。
雨音からショパンの雨だれの曲を連弾をしながら、「世界は音楽に満ちているのよ」という母の言葉が心に響きます。
原作では本選の栄伝亜夜の演奏シーンは書かれていませんでしたが、映画ではラストシーンはしっかりと弾き終えて満足した彼女の笑顔でしめくくられていたのが印象的でした。
■まとめ
映画版「蜜蜂と遠雷」の個人的な印象をとりとめもなくご紹介しました。
音楽好きな方には特にオススメの映画です。
ご参考になれば幸いです。