「誰かにこうしてほしいけど、全然聞く耳を持ってくれない」「どういう風に相手を説得したらいいのかわからない」というような問題を感じる時はありませんか?
そんな時におすすめの本が「THE CATALYST 一瞬で人の心が変わる伝え方の技術」です。
子供に野菜を食べさせたい時などに、どうしても「押し」の一手をとってしまいがちですが、筆者によるとそれは相手が反発してしまい逆効果といいます。
ではどういう方法で人の心を変えたらいいのかの答えがこの本に書かれています。
それは少ないエネルギーで変化を起こす方法で、触媒(カタリスト)のようにということから本書の英語の題名になっています。
■「THE CATALYST 一瞬で人の心が変わる伝え方の技術」の概要
全体は次の5つの章から構成されています。
この5つが障害そのものを表わしていて。それを解決することが人の心を変える伝え方の答えになります。
第1章心理的リアクタンス──相手に自分で自分を説得させる方法
第2章保有効果──行動を起こさないことのリスクを相手に気づかせる方法
第3章心理的距離──小さなお願いから始めて相手の考えを変える方法
第4章不確実性──心理的ハードルを下げて購買に誘導する方法
第5章補強証拠──証拠を重ねて相手の心を動かす方法
それぞれの章の課題をいかに解決するかがエピソードや実例を交えて説明されています。それぞれの章から、解決策と印象に残ったポイントを紹介します。
■「THE CATALYST 一瞬で人の心が変わる伝え方の技術」の印象に残ったポイント
第1章心理的リアクタンス
ここで言葉の定義を押さえておく必要があります。何回も出てくる言葉「心理的リアクタンス」とは以下のように説明されています。
心理学の世界で「心理的リアクタンス」と呼ばれる現象を引き起こす。「心理的リアクタンス」とは、自由が奪われた、あるいは奪われそうになっていると感じるときに生まれる不快な状態だ。
何かああしろこうしろと誰かに言うと心理的リアクタンスが働いて不快な状態になるため反発を感じるというわけです。
確かに子供の頃親から勉強しろと言われるとよけい勉強したくなくなったと感じたことのある方も多いのではないでしょうか。
ここでも解決策としては相手に選択権を与えることで、人から言われてやるのではなくて自らが選択して行動させるのがポイントです。
そのためのポイントとしては四つあげられています。
1メニューを提供する
2命令ではなく質問をする
3ギャップを明確にする
4理解から始める
何かをしなさいと上から命令するのではなく、 かといって完全に放任するのでもなくてその間のバランスをとる「変化の仲介役」になるということです。
メニューを提供することで相手に選択肢を提案し、答えを自分で見つけられるような質問をし相手の思考と行動の間にあるギャップを明確にします。
こちらの言い分に耳を傾けてもらうためには相手に共感と理解を示し、信頼関係をまず気づかないといけないということです。
第2章保有効果
保有効果とは既に持ってるものやしていることを過大評価する傾向があることを言います。
保有効果を和らげるための鍵は以下の二つです。
1何もしないことのコストを意識させる
2退路を断つために船を焼く
エピソードとしてWindows 7をアップデートしたくないという現状維持バイアスを取り除くために、
「セキュリティ上の理由により Windows 7を搭載したマシンは2ヶ月後にはネットワークに繋げなくなります」と警告を出したことでユーザーはしぶしぶ切り替えたそうです。これが退路を断つために船を焼くということの意味合いになります。
第3章心理的距離
面白いと思ったのは次の引用部分です。
客観的であるはずの科学的な研究であってもどう解釈するかはその人の立場によって変わってくる。人間は自分の立ち位置によって与えられた情報が正しいかそれともピークであるかを判断する。正しい情報を教えようと思って証拠を提示しても、返って相手との距離が広がることになるのだ。
という話です。
コロナワクチン接種に対して賛成派と反対派と別れるのもそうだし、政党間の対立もそうだと思われます。自分の考えを裏付けるような情報ばかりを探すという人間の性質は確証バイアスと呼ばれています
こういう時はどう対処すれば良いのでしょうか?
著者によると相手との距離を縮める方法は以下の3つです。
1移動可能な中間層を見つける
2小さなお願いをする
3現状打破のポイントを見つける
例えば新製品を大々的に売り出したい場合は全ての消費者にPRするのではなくて、その製品へのニーズが既にあるグループを見つけるというような考えが移動可能な中間層をまず見つけるということです。
いきなり大きな本題から入るのではなくて相手の許容できる範囲の小さな問題から始めるということです。ダイエットさせるため、1日に飲むペットボトルを3本から2分に減らすよう、できることから始めたという事例がわかりやすいです。
現状打破のポイントとは、お互いに歩み寄れる話題や同意できる話題を探してそこから始めるということです。
第4章不確実性
不確実性とは人は商品券より宝くじの方が低く評価するように、製品サービスアイデアなどわからない部分つまり不確実な部分が多ければ多いほど人は価値を低く評価するということです。
これを取り除くにはデパ地下売り場の試食品のようにただで味見をしてもらってその後の判断はお客に任せるようなことが有効です。
この本で一貫して伝えられていポイントは
「変化を妨げる障害を取り除くこと」
です。そうすることで新しいことに挑戦するハードルを低くすることができます。
第5章 補強証拠
他人を説得するためには根拠のある証拠を示すことも重要です。その時にこの金でいうところの翻訳の問題という言葉が出てきます。
翻訳の問題とはどういうことかというのが次の説明文です。
他人から何かをすすめられたとき、または他人が何かを楽しんでいるのを見たとき、私たちは「それは自分にとって何を意味するのか」と考える。これが「翻訳」だ。推薦者の意見はどこまで信頼できるのだろう?自分も好きになれそうなものだろうか?
つまりその人に置き換えてその人目線で考えてみるということです。
なかなかそこまで冷静に考えるのは簡単ではなさそうですが、確かにそういう見方も必要だと思いました。
翻訳の問題を解決するための具体策として
・複数のソースから同じことを言っていることを示す
・誰の影響力が最も大きいのか
・いつ状況証拠を提示するのが最も効果的なのか
・どのように展開すると大きな変化が起こせるのか
それぞれの詳細な説明は省略します。詳細を確認したい方は本書をお読みください。以上をまとめた5つの障害の言葉の定義の表を引用しておきます。
■行動に移したいポイント
やはり頭ごなしに相手を説得しようということではなくて、相手の立場も理解しながら相手に自分の意思で変わっていくようにいかにうまく仕向けられるかがカタリストと呼ばれる説得者になるポイントだと思いました。
5つの障害を取り除くためのポイントの中からどれかひとつでも行動に移していきたいところです。
この中には 今回説明しきれてない言葉が混じっていますので気になる方は本書をお読みください。
今回紹介されている手法は、個人ベースだけではなくて、不特定多数を相手にするマーケティング手法にも応用できる話だと感じました。
■著者について
本書からの引用です。
ジョーナ・バーガー(JonahBerger)──ペンシルベニア大学ウォートン校マーケティング教授。国際的ベストセラー『インビジブル・インフルエンス決断させる力』(東洋館出版社)の著者。行動変化、社会的影響、口コミ、製品やアイデア、態度が流行する理由を専門に研究する。一流学術誌に50本以上の論文を発表。『ニューヨーク・タイムズ』紙、『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙、『ハーバード・ビジネス・レビュー』誌などに寄稿した記事も人気を博している。──Apple、Google、NIKE、ビル&メリンダ・ゲイツ財団などをクライアントに持つコンサルタントでもある。これまで数百の組織とともに働き、新製品の浸透、世論の形成、組織文化の変革などを実現してきた。『ファスト・カンパニー』誌の「ビジネス界でもっともクリエイティブな人々」に選出され、その仕事は『ニューヨーク・タイムズ・マガジン』誌の「年間アイデア賞」で複数回取り上げられた。
■まとめ
ジョーナ・バーガー.著の「THE CATALYST 一瞬で人の心が変わる伝え方の技術」のポイントを読書メモとしてまとめて紹介しました。
参考になれば嬉しいです。